親は「争い」を防ぎたいのではない
子どもが悲しむ姿を見たくない

 相続対策という言葉を聞くと、多くの人は、「争いを防ぐためのもの」というイメージを持っています。
 もちろん、それも大切な目的の一つです。

 しかし、実際に親御さんのお話を聞いていると、少し違うことに気付きます。
親が本当に恐れているのは、争いそのものではありません。
 子ども達が悲しむことです。
 ある親御さんが、こんなことを話してくれました。

 「揉めてもいいんです。でも、あの子達が傷つくのは見たくないんです。」私はこの言葉が今でも忘れられません。
 親にとって子どもは、何歳になっても子どもです。50歳になっても、60歳になっても、親の気持ちは変わりません。
 だから、相続の話になると、財産より先に子どもの顔が浮かびます。
 「あの子は納得してくれるだろうか」「傷つかないだろうか」「兄弟仲が悪くならないだろうか」そう考えているうちに、遺言を書く手が止まります。

 一方で、子ども側は、「早く決めてほしい」と思っています。
 ここに大きなすれ違いがあります。

 親は愛情から迷い、子どもは心配から急ぐ。

 どちらも家族を思っているのです。
 だから、どちらが正しいという話ではありません。

 大切なのは、その気持ちを知ることです。もし親御さんが遺言を書こうとしないなら、それは無関心だからではないかもしれません。

 むしろ、家族を大切に思う気持ちが強いからこそ、決められなくなっているのかもしれません。

次回は、

実は意外な事実、
「兄弟仲が良い家族ほど遺言を迷うことがある」というお話をしてみたいと思います。