決められないのは優柔不断だからではありません

― 親が遺言を書けない本当の理由

これまで多くの方の遺言作成のお手伝いをしてきました。
その中で感じることがあります。

それは、
「遺言を書かない人」と「遺言を書けない人」は違うということです。

子どもから見ると、「何年も前から話しているのに」「必要だと分かっているはずなのに」「なぜ動いてくれないのだろう」そう思うことがあります。

しかし実際に親御さんのお話を聞いていると、違う景色が見えてきます。
多くの親御さんは、遺言の必要性を理解しています。

相続で苦労した知人の話を聞いたこともあります。
遺言がないと大変になることも知っています。
それでも進まない。

なぜでしょうか。

理由は意外にも、財産ではありません。
子ども達です。
長男は近くに住み、何かあると駆けつけてくれる。
長女は遠方にいるが、いつも気にかけてくれる。
次男は仕事が忙しいが、経済的には少し心配だ。

どの子も大切。
どの子にも感謝している。
だからこそ決められないのです。

相談の席で、「先生ならどうしますか」と聞かれることがあります。
私は、「どうしたいと思っていますか」と聞き返します。
すると不思議なことに、財産の話ではなく、子どもの話が始まります。

遺言とは財産を分ける作業ではありません。
親にとっては、人生を振り返る作業なのです。
だから時間がかかります。
だから迷います。

そして、それは決して悪いことではありません。

次回は、
親が最も悩む「平等と公平」について考えてみたいと思います。