遺言は財産を分ける紙ではありません― 想いを残す手紙です

遺言という言葉を聞くと、多くの方は、財産を誰に渡すかを書くもの、というイメージを持っています。

もちろん、法律的にはそのとおりです。
誰に何を相続させるのか。
どの財産を誰に承継させるのか。
それが遺言の大切な役割です。

しかし、私はこの仕事に携わる中で、遺言にはもう一つの役割があると感じています。
それは、想いを残すことです。

例えば、長年連れ添った配偶者への感謝。
介護をしてくれた子どもへの感謝。
遠くから見守ってくれた家族への感謝。
そうした気持ちは、財産の分け方だけでは伝わりません。

だからこそ、付言という仕組みがあります。

付言には法的効力はありません。
しかし、心を伝える力があります。
「ありがとう」
「助かったよ」
「みんな仲良くしてほしい」
そんな一言があるだけで、遺言の受け止め方は大きく変わります。

相続で本当に大切なのは、財産だけではありません。
その人が、どんな人生を歩み、何を大切にしてきたのか。
それを家族に伝えることです。

遺言は、冷たい法律文書ではありません。
人生の最後に残す、家族への手紙でもあるのです。

次回は、
 多くのご夫婦が選ぶ「全財産を妻に相続させる遺言」について考えてみたいと思います。